遺言書の種類は実質2つ

実質的に遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類だと思ってください。
もし、これから遺言を作成するとなると、通常このどちらかを選びます。
「いやいや、遺言の種類はもっと他にもある」と思った方は、かなり遺言に対する知識が深い方です。
たしかに、民法で定められた遺言の種類は全部で7つもあります。

普通方式と特別方式

遺言は大きく分けて普通方式と特別方式とがあります。
特別方式は、例外的な状況の中での遺言の方式なので、一般的に遺言を作成する場合、普通方式の中の自筆証書遺言か公正証書遺言を選びます。
7つの遺言の簡単な説明を行います。

普通方式

普通方式は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あります。
秘密証書遺言は普通方式ではあるものの、実際に作成されることはほとんどありません。
その理由は後述します。

  • 自筆証書遺言
    いつでも誰にでも簡単にできる最も簡単な遺言です。
    本人が自分で、全文、日付、氏名を自筆して印を押せばできます。
    ただし、紛失や変造の危険と方式不備で無効になる恐れがあるという短所もあります。
    詳しくは「自筆証書遺言」をご覧ください。
  • 公正証書遺言
    公証役場などで本人の口述内容を公証人が公正証書にして作成する遺言です。
    作成する際は証人が2名必要です。
    費用と手間はかかりますが、保管が確実で方式不備になることも考えられないので最も確実な遺言方式です。
    当事務所に依頼される方のほとんどが公正証書遺言で作成なされます。
    詳しくは「公正証書遺言」をご覧ください。
  • 秘密証書遺言
    遺言内容を死ぬまで秘密にしたいときに使う方式で、本人の署名捺印と2名以上の証人と公証人が必要です。
    自筆証書遺言と公正証書遺言を足して2で割ったような方式ですが、率直に言うと中途半端です。
    秘密保持と保管は確実ですが、方式不備になるおそれがあるうえ費用と手間がかかります。
    それならば自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかを選びますし、公正証書遺言は遺言の中身は公証人やサポートする行政書士には知られますが、どちらにも守秘義務がありますので、実質的には中身についても秘密にできます。
    なので、実質的に秘密証書遺言は作成されることはほとんどありません。

特別方式

特別方式の遺言は4種類あります。
例外的な状況の場合の遺言方式なので、ほとんどの方に必要ではないです。
一応参考程度に記載します。

《危険な事態が目の前に迫っているとき(危急時)》

  • 一般危急時遺言
    病気やケガで臨終の時が迫った時にする遺言です。
    証人3名以上が立会い1人が口述し全員に読み聞かせ、20日以内に証人か利害関係人が家裁に請求し確認を取ります。
  • 難船危急時遺言
    船の遭難で船の中にある時に臨終が迫った場合の遺言です。
    証人2名以上立ち会えば口頭でいいです。
    証人が趣旨を筆記し、署名捺印し、証人の1人または利害関係人から家裁に遅滞なく請求し確認を取ります。

《一般社会から離れた場所(隔絶地)にいる時》

  • 一般隔絶地遺言
    伝染病で病院に隔離された人が遺言を作る場合で、警察官1名と証人1名以上の立ち合いが必要です。
  • 船舶隔絶地遺言
    船舶内にいる人が遺言を作る場合で、船長または事務員1名と証人2名以上の立ち合いが必要です。

まとめ

要するに遺言とは自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類と思って結構です。
当事務所にご依頼なされる方の多くは有効性が高く、保管が確実な公正証書遺言を選ばれます。

自筆証書遺言 公正証書遺言
特徴 自分で書いて作成します。
費用がかからず手軽にできますが、紛失や変造の危険があります。
公証人と証人の立ち合いの元に公証役場で作成します。
手間と費用がかかりますが、保管が確実で遺言内容がに実現される可能性が極めて高いです。
作成方法 遺言者が自分で「全文」「日付」氏名」を自書し、押印します。 証人2名の立ち合いのもと、公証人が読み上げる遺言書の内容を遺言者が確認して、内容に間違えが無ければ、遺言者、公証人、証人がそれぞれ署名・押印する
作成費用 不要 財産額や内容に応じて公証役場へ手数料を支払います。
証人 不要 2名必要
検認 必要 不要