遺言とは一体なにか?

遺言は、国語辞典によると「死後の処置について身寄りの者などに言い残すこと」とされています。
広い意味での遺言は特に方式は自由で、家族などに自分の死後の処置や思いを口で伝えれば、それは「遺言」となります。
ですが、それが法律効果が発生する遺言になるかは別です。
民法の方式に従わない遺言ならば、遺言者の死後に残された家族等がその遺言に従わなくても自由になります。

法律上の「遺言」は、人の財産の処分等について最終の意思(遺言者の願い)を実現するための制度であり、その意思を実現を保証するのが法律上の遺言制度です。
法律上の遺言は家族等の利害関係人は従わなければなりませんので、財産相続などでの影響が大きく、本当に遺言者本人の遺言なのかを保証するために、法律上様々なルールが設けられています。

遺言にはルールがあります

上記でも申し上げましたが、遺言はその人の最終の意思ですので、法律上の一定の方式に従わなければ死後に効力は発生しません。
遺言の方式は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の普通方式の遺言危急時における特別方式の遺言があります。(詳しくは遺言書の種類をご覧ください)
上記の方式は民法に規定されており、その方式に従わない遺言は無効となります。
方式が厳格な理由は、遺言の効果が発生するのは遺言者の死後であり、遺言者本人が作成したのか明確にするためです。

内容にも一定の制約があります

遺言を書けば何でも実現できるわけではなく、遺言内容にも一定の制約があります。
法律上の遺言はあくまでも法律効果を発生させるためのものですので、「子供たちはお母さんを大切にするように」と遺言に書いても法律的な意味はありません。
ただ、遺言はそういった遺言者の思いを実現させるために作成するものであり、自分の死後、配偶者である妻をどのようにして不憫なく暮らせるようにするか、そのためにどのような財産分与をし、どのような遺言書が必要なのかを考える必要があります。
それに、「子供たちはお母さんを大切にするように(付言事項)」を書いても法律的な効果はありませんが、残された家族は遺言書に書かれた死者の言葉を尊重しますので、トラブル回避の役割を果たす効果があります。

また、法律の規定と異なる遺言内容が問題となるケースもあります。
法律上、相続人には遺留分というのがあります。
遺留分とは、簡単に説明すると法定相続人に最低限保証された相続分のことで、相続分をゼロにするような遺言であっても、各相続人が最低限これだけは相続できると保証された割合です。
例えば、「長男の一郎に全財産を相続させる」というような遺言の場合、他の相続人の遺留分を侵害することになります。
法律は、こういう場合を想定して、遺留分を侵害された相続人に「遺留分減殺(取り戻し)請求権」を認めています。
遺留分減殺請求権は権利なので、行使するのかしないのかはその相続人の自由ですし、行使できる期間も定められています。
遺留分を侵害する内容の遺言書は無効ではありませんが、他の相続人に遺留分減殺請求権を行使される可能性があるということです。
遺留分減殺請求権が行使されると相続トラブルの原因となりますので、他の相続人にも遺留分程度の相続分を与える遺言にしておくのも一つの考え方です。

遺言を残すには

遺言は15歳以上であれば、認知症などで事理弁識能力がない場合を除いては、誰でも可能です。
未成年であっても15歳以上であれば親の同意はいりません。

遺言が無ければ法定相続となります。
法定相続とは違う相続をさせたいと思う方も多いと思います。
法定相続は結局は相続人同士の話し合い(遺産分割協議)となりますので、法定相続はトラブルの原因となりえます。
遺言によって財産の処理方法を定めていれば、こういった無用の争いを避けることができます。
たとえ自分の死後、どのように財産が処理されてもよいと思っても、自分の死が原因で家族が仲悪くなるのは誰もが嫌なはずです。
遺言を書くということは、大切な人たちがこれからも末永く仲良くしてもらうためのマナーです。