【相談内容】

事実婚の内縁の妻と、その妻との間にできた子がいます。
このまま私が亡くなると、妻と子が私の財産を相続できず、私の兄弟姉妹が相続するらしいのですが、どうしたらいいのでしょうか?

【解決方法】

内縁の妻には遺言で遺贈すればいいです。
 子は「認知」すれば相続権を得ます。

正式な夫婦と内縁の夫婦

日本では、お互いが結婚するという意思があり、婚姻届けを提出し法律上の正式な結婚をしていないと、夫婦としての法律上の保護を受けられないとなっています。
たとえ結婚式をあげ、一緒に生活をし、また周りに夫婦として認められてたとしてもダメです。

お互いに愛し合い、共に生活し、夫婦としての意思があったとしても、婚姻届けを提出していない夫婦は「内縁関係」または「事実婚」といい、原則として法律上の権利や保護を受けられません。

内縁の子について

内縁の夫婦に子供ができても、その子供はそのままでは夫の姓を名乗れません。
そもそも夫が自分の子であることを認める「認知届」を市区町村役場に提出しなければ、夫の子とは認められません。
認知さえすれば婚姻外にできた子も実施として相続ができます。

嫡出子と非嫡出子の相続分は同等

正式な婚姻関係の間で出来た子のことを嫡出子といい、内縁関係など婚姻外で出来た子のことを非嫡出子と呼びます。
非嫡出子も子なので第一順位の相続人ではありますが、以前は法律婚の保護の観点から非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされてました。
ですが嫡出子になるか非嫡出子になるかは自分ではどうすることもできませんし、嫡出子と非嫡出子の間に相続分の差を設けることは、憲法の平等の原則に反するのでは、ということになり、民法が改正され、今では嫡出子も非嫡出子も相続分は同じです。

ですが、内縁の妻には夫の財産を相続する権利はありません。
たとえ内縁の妻が長年にわたって夫や夫の親の介護に尽くしてきたとしても、夫の財産は相続できません。

重婚的内縁関係

夫が何年も婚姻上の妻と別居しており(事実上夫婦関係は破綻している)、別の女性と内縁関係を続けているケースがあります。
このことを重婚的内縁関係といい、婚姻上の妻よりも内縁の妻の方が夫婦としての実体があるといえます。

しかし、夫が死亡した場合に、遺体の引き取りや相続を主張してきた場合、内縁の妻は引き下がるしかありません。

このように、長年一緒に生活し、子供がいても、相続に関しては内縁の妻は相続に関する権利を主張することはできません。

遺言こそが内縁の妻を救済する方法

夫(被相続人)に婚姻上の妻と子、親がいない場合は、夫が遺言で内縁の妻に全財産を渡すことは可能です。
もし夫に相続人である兄弟姉妹がいたとしても、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺産をよこせと言ってきたとしても、その要求に従う必要はありません。
もし内縁で出来た子がいれば、その子を認知すれば子は第一順位の相続人となりますので、そもそも兄弟姉妹は相続人になるということになりません。

もし夫(被相続人)に婚姻上の妻と子がいた場合は、遺留分を配慮する必要があります。
その場合でも、内縁の妻に全財産を渡す遺言は有効ではありますが、相続後、婚姻上の妻と子が内縁の妻に遺留分を主張することも考えられます。
そうなれば内縁の妻にとっても負担になってしまいます。
なので遺言を婚姻上の妻と子に遺留分くらいの財産を相続させる内容にしておけば、相続開始後に婚姻上の妻と子が内縁の妻に遺留分を主張してくることはありません。

特別縁故者

では、遺言が無い場合は、内縁の妻は一切財産をもらえないのでしょうか。
もし夫に法定相続人(婚姻上の妻子、親、兄弟姉妹)がまったくいない場合は、内縁の妻は特別縁故者として、家庭裁判所に申し立てれば、その財産の全部または一部を受け取れる可能性があります。
また、内縁の夫婦が住んでいた建物が借家の場合、ほかに法定相続人がいなければ、内縁の妻は借家権を取得することが認められています。

ただ、特別縁故者として財産を受け取るには、上記のような条件が必要で、すぐにもらえるわけではありませんので、やはり遺言書を作成してあげることが、一番適切な大切な人を守る方法であることには違いありません。