遺言のよくある5つの誤解

皆さんは「遺言」って聞くと、どう思いますか?
なんだか重々しく感じたり、できるだけ話題にもしたくない事と思ってませんか?
私もこの仕事をしていると、遺言に対する間違ったイメージを持たれてる方をたくさん見受けられます。
そういう自分も、多くの方と同じように昔は遺言に対するイメージはよくありませんでしたし、余程の資産家とかじゃないと無縁のものなんじゃないのかと思ってました。
しかし、なんの因果か私は父の残した遺言書に励まされ、今こうして遺言書作成のお仕事をさせていただいてます。
なので、よく見受けられる遺言に対する誤解に対して歯がゆい気持ちがあります。
以下に、遺言書に対してよくある代表的な5つの誤解を紹介させていただきたいとおもいます。

①「遺言ってなんだか怖い・・・」

遺言には、どうしても「死」を連想させるので怖いイメージがあります。
遺言書を作成することは暗い気持ちになったり、重くてつらい事と感じる方が多くいます。

ですが、今までこの業務を通じて色んな方の遺言書作成をさせていただいて確実に言えることが一つあります。
遺言書を作成して後悔された方は一人もいません。

遺言書を作成することで、今まで一人で漠然と考えていたことや悩んでいたことが、書面の中に形となって整理されることで、皆さんスッキリした表情をなされます。
そして、実際に遺言書作成をするために「具体的な行動」をすることによって、財産のこととか、大切な人、家族のことをより深く考えるきっかけとなります。
そのことによって、人生を振り、今まで忘れていたことを思いだしたり、気付かされたりすることがよくあります。

初めは遺言書を作成することに不安な気持ちを持たれていた方も、遺言書を作成すると満足した顔をなされます。
あるお客様に「充実した時間でした。ありがとうございました。」と言われたことは、この仕事をしていてとても嬉しいことでした。

私は遺言書作成のプロとして、ただ遺言書作成をするだけでなく、お客様に満足した気持ちを提供することだと考えております。

②「うちの家族は仲が良いから遺言書はいらない」

「うちの家族は仲が良いから遺言書は作る必要はないよ」
こういった意見はよく聞きます。

そういう方に一つ質問させていただきたいのですが、今家族が仲が良いのはあなたの存在が大きいからじゃないですか?
あなたという大黒柱がいるから、家族が結束できているって場合も十分あり得ます。

あなたがいない世界を想像してください。
そのあなたがいない世界の家族を、あなたの代わりに束ねる分身のような役割を果たすことができるのが遺言書なのです。

それに遺言書が無いと、残された方々は遺産分割協議をしなければならず、これがかなりの負担になります。

遺言書がなかった場合

もし遺言書作成せず亡くなられた場合、そのあと家族は相続手続きとして「遺産分割協議」をしなくてはなりません。
遺産分割協議とは、遺産をどう具体的に誰が貰うのかの話し合いです。
遺産分割協議は故人の銀行預金にある現金や住居などの不動産などを引き継ぐために必要な手続きです。

遺産分割協議は結構大変で、相続人全員でしなければならず、相続人を確定させるために戸籍収取をしたり、分割をするための相続財産を確定させたり慣れない方にとっては大変です。
それに、やっと遺産分割協議を始めたとしても、一番揉めるのがこの遺産分割協議です。
あまり不安を煽るような事はしたくないですが、今まで仲良かった家族がこの遺産分割協議が原因でバラバラになるのは珍しい話ではありません。
遺産分割協議はご家族にとって大変な苦労を伴います。

遺言書があった場合

遺言書の書き方にもよりますが、もし遺言書に具体的に財産をどう分けるか指定してあったら、遺産分割協議をする必要はありません。
なので、その後の手続きもご家族に負担をかけさせず、無用な争いを引き起こさずに済みます。
それに家族のために、わざわざ遺言書を残してくれていたという事が故人の家族への愛情を感じ、ほとんどの場合今まで以上に家族が結束します。

遺言書は、故人から大切な人へのラブレターのようなものです。
遺言書を作成するというたった一手間が、家族の絆をさらに深くします。

③「遺言書を残すほどの財産なんて無い」

本人は「大した財産は持っていない」と思っていても、相続人であったり財産を承継する方々にとっては大した財産だという事はよくあります。

それによくある誤解ですが、相続でもめるのは相続財産の大小は関係ありません

財産が多額でも少額でも、もめる時はもめるし、もめない時はもめないというのが実態だと思います。
ドラマや映画などでは財産が多い方が面白いので、そういう設定が多く財産が多くないと揉めないという誤解が生じたのだと思います。

これは実際のデータを見ていただければわかります。
相続人間だけでの遺産分割協議では収拾がつかず、家庭裁判所の調停が入り成立した件数ですが、1,000万円以下の遺産で家庭裁判所の調停が入った件数が2,476件あり、総数が7,458件なので全体の33%にもおよびます。
要するに、「遺産は少額でももめるということです。

事件の総数 1千万円以下 5千万円以下 1億円以下 5億円以下 5億円を超える 算定不能・不詳
7,485 2,476
(33.1%)
3,177
(42.4%)
914
(12.2%)
538
(7.2%)
42
(0.6%)
338
(4.5%)

※データ元はこちらです→http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/341/009341.pdf

④「遺言書に記載した財産はもう使えない」

遺言書に記載した財産を使用したり売却することができなくなると思って、遺言書を作成するのをためらってる方がたまにおられますが、それは誤解です。

遺言書は契約ではなく、遺言者の死後発生する「単独行為」です。

遺言書は、いつでも撤回できます。
もし遺言書の内容と抵触する行為をしたとしても、撤回をしたとみなされるだけです。
抵触する行為とは、遺言書に「長男の太郎に土地・建物を相続させる」と書いて、その後その土地・建物を他人に売却したとしても、その遺言のその部分が撤回されたとみなされるだけです。
遺言者が遺言書の内容に拘束されることはありません。

⑤「遺言書を作るのにはまだ早い」

遺言書は法律行為なので作成時に遺言の内容を認識できる能力がないと、その遺言書は無効になります。
病気や高齢時に作成した遺言書は遺言能力の有無を争って、もしかすると遺言書が無効となってしまう可能性があります。

なので遺言書は心身の状態が良い時に作成する必要があります。

では遺言書は、具体的にいつ作成すべきなのでしょうか?

法律では遺言書は15歳から作成することができます。
ですが15歳の子に、「遺言書を作成しましょう」と言うのはさすがに気が引けます。

遺言書は「作成したいと思った時に作成する」がベストのタイミングだと思います。

遺言書はいつでも作り直すことができますし、「まだ若いから」とか年齢は気にする必要ありません。

例えば20代で結婚した人が大切な家族の為に、もしもの事を考えて保険に加入したりしますよね?
そのタイミングで遺言書を作成するのも良い事だと思います。

遺言書は大切な方のために作るものでもありますし、遺言書を作成しなかった事で守りたい大切な方に想定外の困難が待ち受ける場合もございます。
大切な人を守りたいと思った時に作成するのも、一つのタイミングです。

まとめ

遺言書に対するよく誤解されている代表的な5つを述べさせていただきました。
では遺言書とは要するに何かと申しますと、
「自分の死後に自分の分身となるもの」と考えてください。

自分のいなくなった世界で自分の代わりに、あなたの想いを実現してくれる唯一の方法です。
もしあなたの死後あなたの大切な人を守りたいのなら、遺言書があなたの分身となってその大切な人を守ってくれます。
そして、その遺言書があなたの愛情の証になります。

もし遺言書についての気になることがあるなら、ぜひお気軽にご連絡ください。
相談料は無料なので、まずは気軽に相談できる喋り相手として当事務所をご利用してください。