【相談内容】

私は小さな会社を経営してます。
子が3人いて、長男を跡取りと考えています。
会社の株などの事業用資産を子供たちに公平に分け与えると経営が成り立たなくなってしまうでしょうが、長男だけに事業用資産を譲ると、他の子たちは不満を持つだろうと思って悩んでいます。
どうしたらいいのでしょうか?

【解決方法】

⇒跡取り(長男)以外の相続人への代償措置に配慮して、事業用資産を跡取りに集める遺言にするといいです。

遺産を細分化できないときは

遺産が預貯金などのように、分割しやすいものばかりならばよいのですが、家業の元になるもので農地、商店や工場の敷地や建物、漁船などのように、分割が困難なもの、分割してしまうと価値がなくなるものも多く、相続によって分割を強いられてしまえば家業を維持・継続ができなくなってしまうケースも少なくありません。

家業が株式会社形態であれば、遺産分けはその会社の株式を分割することで形としては容易に解決します。
しかし、家業の維持・継続という点で考えれば、株や事業資産を複数の相続人でバラバラに保有されてしまうと、統制のとれた会社経営は困難になってしまいます。

被相続人は、自分が続けてきた家業を、自分の死後も、誰かに引き継いでもらいたいと思うのが当然のことです。
息子の一人が跡継ぎになるのであれば、その子に株や事業資産をまとめて相続させて経営をまかせたいと思うでしょう。
問題は、そのことで受け取る額が減る他の子たちが不満に思い、争いが起こらないかどうかです。

このような場合、被相続人が何も対策をせず亡くなると、遺産分割をめぐって争いが起こることは目に見えています。

遺言を残す主要な目的は、被相続人(遺言者)の死後に相続をめぐるトラブルが起こらないようにするためです。
被相続人は、知恵を絞り遺言を作成をする必要があります。

争いが起きない遺言の方法を考える

家業を維持・継続していくのに必要な相続財産のほかに、これと同等か上回るほどの財産があれば子供たちに平等に遺産分けができるので話は簡単です。

問題となるのは、家業の維持・継続していくのに必要となる財産が遺産のほとんどという場合です。
その場合でも、跡取りとなる息子に必要となる財産を相続させる旨の遺言をしておきます。
他の子には「遺留分」という権利がありますので、その分をどう埋めるのかを考える必要があります。

まずは、家業とは関係ない財産を跡取り以外の相続人に分配します。
これで不足する分は、家業から上げる収益から分割払いで遺留分に達するまで支払う事にするよう遺言する事で解決できます。
もしそれでも、子供たちが納得しないなら、家業に必要な財産を子供たちで共有し、その共有財産を実際に使用する者(跡継ぎ)が、他の相続人に対して使用料として金銭を支払うという方法も考えられます。
ただこの場合は、他の相続人が共有財産の持分を他人に売り渡してしまう可能性もあり、事業用資産が他人と共有になってしまうリスクもあるので、あまりお勧めできません。

子供たちが遺言の指定に納得できなければ、遺留分を最低限の保証分として取戻し請求ができます。
そういうトラブルが起きないように、生前から子供達とはよく話、納得してもらうことがよりスムーズな相続ができる事となります。